背中の痛みの主な原因
背中の痛みは、背中の筋肉疲労(筋肉痛)以外にも様々な原因によって起こり得ます。
背中以外の箇所にも様々な不快な症状が現れている場合、肩こりや腰痛、骨の劣化やゆがみ、内臓の病気など、背中以外の様々な要因がからんでいる可能性があります。
主な原因についてカテゴリごとに分類し、痛みを引き起こす病気や障害を一覧で表示しています。
<目 次>
原因1 『筋肉疲労』
背中の痛みの原因の一つとして最も多く見られるのが、背中の筋肉の疲労による「こり」や「筋肉痛」です。
背中の筋肉は、様々な負荷がかかることで緊張し、疲労します。
その疲労がある程度蓄積すると、背中のコリや痛みとなって現れてきます。
背中の筋肉を疲労させる主な要因には、
「背筋を使った運動」、「姿勢の悪さ」、「長時間同じ姿勢でいることによる緊張」、「肩こりや腰痛による間接的な負荷の増加」などがあります。
背中に現れる症状や痛みの大きさも様々です。
軽度の疲労によって一時的に軽い痛みや生じることが多いですが、進行すると寝返りもうてないほどの激痛を感じることもあります。
場合によっては数年〜数十年にわたって慢性化するケースもあります。
筋肉疲労を原因とする背中の痛みについては別項で詳しく解説しています。
原因2 『ケガや骨の異常』
背中や胸に大きな衝撃が加わると、背中の打撲、ねんざ、骨折などの外傷(ケガ)が原因で背中が痛むことがあります。
こうしたケガは主にスポーツ事故、転落事故、衝突事故、暴行などによって起こります。肋骨の骨折はゴルフのスイング時に起こることもあります。
骨折の場合、主に胸椎(胸のあたりの背骨)や肋骨(あばら骨)が折れたり、ヒビが入ることで背中が痛みます。
特に、骨粗しょう症などで骨がもろくなっている高齢者は注意が必要です。軽い転倒でも骨折しやすく、くしゃみをしただけで骨折するようなケースもあります。
- 患部が赤く腫れ上がることが多い
軽度の打撲や捻挫、ヒビが入る程度の骨折、体の深部の骨折などでは腫れが見られないこともある - 患部を押したり叩いたりすると強く痛む
- 事故などで強い衝撃を受けた後すぐに痛み始める
外傷による背中の痛みは、原因がすぐに思い当たることが多いです。
事故などで胸や背中に強い衝撃を受けたことがきっかけで背中が痛み始めた場合は、打撲、捻挫、骨折などの外傷を疑いましょう。
【関連項目】
背骨は、首から腰まで、体の中心を通って体が崩れないようにまっすぐに保つ役割を果たしており、頭蓋骨、肋骨、骨盤、手足の骨など、体中の骨と密接なつながりがあります。
そのため体のあちこちで「ゆがみ」が生じると、その影響で背骨にも歪みや変形が生じやすくなります。
背骨がゆがむと、背骨やその周辺の組織にも大きな負担がかかるようになります。
その結果、筋肉が疲弊して背中が痛んだり、骨や靭帯などがおとろえて、周囲の神経や血管が圧迫されることで痛みを生じることもあります。
- 幼いころから事故や怪我を繰り返す
→負荷が蓄積して骨などの組織が弱くなったり変形しやすい - 事故などで一度に大きな衝撃が加わる
- 背中や腰に負担をかける悪い生活習慣
→姿勢の悪さ、過酷な肉体労働、肥満など - 背骨の異常をともなう病気・障害
こうした要因によって直接背骨に負荷がかかって歪みが生じることもあれば、腰など他の部位の歪みが続いた結果、背骨の歪みにつながることもあります。
症状が軽いうちは、姿勢の矯正やストレッチングなどの運動療法で治すこともできますが、歪みが大きくなるほど治療に長い時間がかかり、手術が必要となるケースなども出てきます。
- 脊椎後弯症(円背・猫背・亀背)
脊柱側弯症
姿勢の悪さ、病気、成長期の発達障害、加齢による骨の劣化などの原因によって、背骨が左右、または後ろに大きく曲がった状態。 - 変形性脊椎症
変形性頚椎症
加齢や負荷の蓄積によって背骨や首の骨(頚椎)の組織が変形し、神経を圧迫するもの。腰痛や肩こりを伴いやすい。 - 胸椎前方変位
本来は背中側にカーブしている胸椎が、胸側に曲がっている状態。柔軟性の高い人や、背中を圧迫するマッサージを受けた人に良く見られる。 - (腰部)脊柱管狭窄症
加齢などによって腰椎(腰部の背骨)の組織が変形し、神経の通り道が狭くなって神経が圧迫されて痛みを感じるもの。 - 椎間板ヘルニア
頚椎椎間板ヘルニア
首や腰への負荷が蓄積することで、背骨のクッションの役割を果たす「椎間板」がつぶれ、周囲の神経を圧迫して痛みを感じるもの。 - 強直性脊椎炎
背骨の関節組織が何らかの原因で骨に変わり、骨同士がくっついてしまう病気。 - 化膿性脊椎炎
背骨に細菌が侵入して炎症を起こし膿(うみ)がたまる病気。背中や腰に急で激しい痛みがある。風邪のような症状がでることもある。 - 脊椎カリエス
結核菌が血管を通じて背骨に転移し、骨や椎間板が破壊されて膿が発生する病気。全身のだるさや背中が固くなったような違和感を感じる。 - 脊椎腫瘍・脊髄腫瘍
背骨や脊髄(中枢神経)に発生する悪性腫瘍(ガン)。大半は乳がん、肺がん、前立腺がんなどからの転移で発症する。安静時も痛みがおさまらず、手足のしびれや知覚障害、筋力の低下などの症状が見られる。
原因3 『内臓の病気・障害』
背中まわりの筋肉、骨、神経などの組織に異常がなくても、背中に痛みを感じることがあります。
特に、発熱、頭痛、腹痛、寒け、吐き気などの風邪のような症状、尿や便に関する異常などの内科的な症状も伴う場合、内臓器官の疲れや病気などの内科的疾患が痛みの原因となっている可能性があります。
- 風邪(かぜ)・インフルエンザ
主な症状は、発熱、せき、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、喉の痛み、筋肉痛、関節痛、頭痛、腹痛、発熱、だるさ、寒気、吐き気、下痢など - 胸膜炎(きょうまくえん)
肺を包む胸膜に炎症が起きたもの。風邪やインフルエンザの悪化で生じることが多く、症状も風邪と良く似ている - 肺炎(はいえん)
肺に炎症が起きたもの。 風邪やインフルエンザの悪化で生じやすく、症状も風邪と良く似ている
- 狭心症(きょうしんしょう)
動脈硬化などが原因で、心臓に送られる血液が不足する病気。特徴的な症状は「左胸周辺の痛み」 - 心筋梗塞(しんきんこうそく)
動脈硬化などが原因で血管が詰まり、心臓に血液が送られなくなる病気。胸の激痛を伴う - 大動脈炎症候群
大動脈に炎症が起こり、血液の流れが悪くなる病気。詳しい原因は不明で、患者の9割は女性。 - 大動脈瘤・解離性大動脈瘤
動脈硬化などが原因で大動脈が弱くなり、コブのように膨らむもの。主な症状は胸の痛みやせき、息切れなど
- 腎盂炎・腎盂腎炎
腸内細菌などによる感染により腎臓に炎症が起きたもの。風邪に似た症状が見られる - 腎臓がん
腎臓に発生した悪性腫瘍(がん)。詳しい原因は不明。特徴的な症状は「血尿」 - 腎梗塞(じんこうそく)
心臓の病気や動脈硬化によって腎臓の血管が詰まり、腎臓の組織が壊死するもの。背中や腰の痛みや尿の異常が見られる - 腎静脈血栓症
血液疾患などが原因で、腎臓の静脈の血液の流れが悪くなる病気。背中や腰の痛みや尿の異常が見られる - 水腎症(すいじんしょう)
尿路の障害によって逆流した尿が腎臓にたまる病気。背中や腰、腹部の痛みが見られる - 尿路結石
腎結石・尿管結石
膀胱や尿道の病気、水分不足などが原因でできる小さな石が尿の通り道に詰まる病気。わき腹から背中にかけての激痛や血尿が見られる
- 食道炎・逆流性食道炎
ストレス、暴飲暴食、喫煙などが原因で食道に炎症が起きる病気。胸焼け、吐き気、ゲップ、膨満感などが見られる - 胃炎・神経性胃炎
暴飲暴食、過度の飲酒・喫煙、刺激の強い食物、細菌感染などが原因で胃に炎症が起きる病気。腹痛、胸焼け、吐き気などが見られる - 胃潰瘍・十二指腸潰瘍
ピロリ菌の感染やストレスなどが原因で、胃や十二指腸の粘膜が溶けてえぐられる病気。特徴的な症状は「空腹時の腹痛」。食事中は痛みが和らぐ - 胃がん
胃にできる悪性腫瘍(がん)。食生活の欧米化やたばこが危険因子とされる。空腹時や食後の腹痛、胃もたれ、膨満感などが見られる - 肝炎・急性肝炎
ウイルス感染やアルコールが原因で肝臓に炎症が起こる病気。背中の右側の痛みや、風邪のような症状が見られる - 肝臓がん
肝臓にできる悪性腫瘍(がん)。肝炎の慢性化や、がんの転移によって生じる。背中や腹部の右側の痛み、腹水、黄疸などが見られる - 膵炎(すいえん)
胆石症などの胆のうの病気やアルコールが原因で、膵臓に炎症が起こる病気。腹部を中心とした広範囲の痛みが特徴で、食事をすると痛みが強まる - 膵臓がん
膵臓にできる悪性腫瘍(がん)。はっきりした原因は不明。背中や腹部の左側に痛みが見られるが症状が出ないことが多い - 胆嚢炎(たんのうえん)
細菌感染によって胆嚢に炎症が起こる病気。胆石症を原因とするケースが多い。特徴的な症状は、みぞおちや右わき腹に発作的に起こる強い腹痛 - 胆石症(たんせきしょう)
暴飲暴食、肥満、ストレスなどが原因で、胆嚢内に小さな石が作られるもの。特徴的な症状は、みぞおちや右わき腹に発作的に起こる強い腹痛 - 胆嚢がん・胆管がん
胆嚢にできる悪性腫瘍(がん)。胆石症やガンの転移が主な原因。肌や眼が黄色っぽくくすむ「黄疸」が出るのが特徴。 - 腸閉塞・腸捻転
過去の腸の手術などが原因で、腸が狭くなったりねじれたりする病気。腹痛、便秘、吐き気などの症状が見られる
- 子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)
子宮内部にできる良性の腫瘍。特徴的な症状は、月経血の量が以上に増える「過多月経」や、生理期間外の出血(不正出血) - 子宮内膜症
子宮から離れた箇所で子宮内膜の組織が増殖するもの。とても強い月経痛(生理痛)や、激しい腹痛・腰痛が見られる - 子宮がん(子宮頸がん・子宮体がん)
子宮にできる悪性腫瘍(がん)。ウイルス感染などによって起こる。生理期間外の出血(不正出血)や、"おりもの"の異常が見られる。自覚症状が出ないことが多い
- 肋間神経痛
肋骨周辺の肋間神経が刺激されて痛みを生じるもの。肋骨のケガ、心臓の病気、風邪、ウイルス感染などが原因。胸の発作的な痛み、呼吸時の背中の痛みなどが見られる - 胸郭出口症候群
鎖骨と肋骨の間のすき間(胸郭出口)が狭まり、神経や血管が圧迫されるもの。なで肩で筋肉が少ない人に起こりやすい。首や背中まわりに痛みやしびれ、だるさなどが見られる - 後縦靭帯骨化症
背骨の周囲を取り囲む靭帯(後縦靱帯)が、何らかの原因で骨のように固くなってしまう病気。手足や指先の痛み・しびれ、歩行障害、排尿・排便障害などが見られる - 帯状疱疹(たいじょうほうしん)
体内に残った水疱瘡(水ぼうそう)を起こすウイルスが再活性化したもの。赤いはれや水ぶくれが帯状に発生し、神経痛のようなピリピリした痛みを生じる
【関連項目】
原因4 『その他』
首の筋肉や腱(けん)、すじなどに、炎症や捻挫を起こす障害に、「寝違え」、「筋違い」、「むち打ち症」があります。
寝違え(筋違い)は、寝ている間に首に負担のかかる姿勢を長く続けたために、首を一定以上動かすと痛みが生じるものです。
むち打ち症は、首に一度に大きな衝撃が加わることで起こる「首のねんざ」です。
これらの障害の主な症状は「首の痛み」ですが、首から背中の上部にかけて痛むこともあります。
詳しくは別項で解説しています。
【関連項目】