胃がんとは(症状・原因・治療)
背中の痛みを引き起こす可能性のある病気の一つに「胃がん」があります。
ここでは背中の痛みとの関係を交えながら解説します。
1.胃がんが疑われる症状
背中の痛みのほかに、以下のような特徴や症状が見られる場合、胃がんが発症している可能性があります。
- 背中の左側が痛む
- 空腹時や食事の後の腹痛(みぞおちあたり)
- 膨満感(お腹が張ったような感じ)がある
- 胃もたれ、胸焼け、ゲップ、吐き気や嘔吐、食欲がない
初期の胃がんでは、半数以上に自覚症状が現れません。
早期に現れやすい症状は、"上腹部(みぞおち)の鈍い痛み"で、空腹時と食後に痛みやすいのが特徴です。胃の膨満感(お腹が張ったように感じる)もよく見られる症状です。
そのほか、胸焼け、ゲップ、吐き気・嘔吐などが起こることもあります。
がんが進行すると初期の症状が多くの患者に見られるようになります。
食事中や食事後に様々な胃の不快感や違和感を感じるようになり、腹痛が食事に関係なく起こるようになります。胃もたれがひどく食欲がなくなり、体重の減少、全身のだるさ、頭痛、めまい、動悸、口臭、下痢、便秘なども現れてきます。
更に病状が進むと、みぞおちやへその上あたりを触った時に"固いしこり(腫瘍)"があるのが分かります。
そのほか、胸・背中・腰の痛み、お腹に水がたまって膨らむ(腹水)、貧血、血を吐く(吐血)、黒いタール状の便がでる(下血)、頭痛やめまい、動悸、味覚異常、嚥下症状(物を飲み込むのが困難)なども見られるようになります。
また、胃がんの症状、経過、進行速度は個人差が大きく、何年も経ってから症状が現れたり、自覚症状がないままに進行したり、急激に悪化したり、と様々なケースがあります。
症状が現れにくいだけでなく、慢性胃炎や胃潰瘍などの他の胃の病気とよく似ているため、他の病気と誤って診断されたりして、ガンの発見が遅れることも多いです。先に述べたような症状がいくつか当てはまるようなら胃がんの可能性も疑いましょう。
2.胃がんとは 〜 原因と特徴
胃がんとは、胃にできる悪性腫瘍(癌(がん))のことです。
発症者は年間10万人以上と非常に多く、死亡数も年間4〜5万人で全てのがんの死亡者数の約1/4を占めるなど、特に危険で警戒が必要ながんの一つです。
男性の発症率は女性の2倍と大きくなっていて、特に高齢者ほど発症しやすく、50〜60歳代の患者が全体の6割です。
胃がんの原因はまだ完全には分かっていません。
欧米人より日本人に多く、食生活の欧米化に伴い減少している兆候があることから、食生活との関係が深いと考えられています。
胃がんの主な危険因子は以下のとおりです。
- 食べ物
胃がん全体の約30%は食べ物が原因といわれます。
「米飯、塩辛い食品、脂肪分の多い食品、熱すぎる飲食物などの食べ過ぎ」、「焦げた食物」などが危険因子とされます。
外食は塩分と脂肪分が高めの傾向があるため、外食が多い人ほど発がんリスクが高くなります。
そのほか、不規則な食生活、早食い、食べ過ぎ、お酒の飲み過ぎも要因の一つです。 - 発がん性物質
活性酸素、食品添加物、防腐剤、カビ、ダイオキシン類、ジメチルニトロソアミン(魚や肉に含まれ、焦げをつくると増える)など。
活性酸素は体内で作られる物質で、過剰に生産されると体の組織にダメージを与え、老化や病気の原因になります。激しい運動をした時、強いストレスを感じた時、細菌やウイルスに感染した時、肥満や喫煙時などに多く作られます。 - その他
喫煙者はたばこを吸わない人に比べて胃がんのリスクが2〜3倍高いといわれます。また、胃潰瘍の原因となるヘリコバクター・ピロリ菌に長期間感染することで胃がんの発生率が高まることがわかっています。不規則な生活やストレスも危険因子です。
緑黄色野菜(生野菜)、果物、牛乳などの乳製品を摂取すると胃がんにかかりにくくなる可能性があるとされています。
がんがどこまで広がっているかによって、「早期胃がん」と「進行胃がん」の大きく2つに分けられます。
早期胃がんは、胃の内側の粘膜から粘膜筋板、粘膜下層までと、がんの広がりが比較的浅いものをいいます。進行胃がんは、更に深い筋層、漿膜下層、漿膜まで広がっているものです。
胃がんの初期(早期胃がん)は、がんの進行が遅く、症状も現れにくいのが一般的です。しかし、発症から2、3年経って進行胃がんになると、がんは急速に成長し、症状も急激に悪化していきます。
この状態になると、手術を行っても再発の可能性が高くなります。
3.診断・治療・予防
胃がんの発見と診断には、消化管造影検査(いわゆる「バリウム検査」(胃のX線検査))や内視鏡検査が有効です。
他にも胃に針を刺して組織の一部を採取し、ガン細胞がないか顕微鏡で調べる「生検(バイオプシー)」という方法もよく行われています。
手術によってがんの広がっている組織を切除する治療が基本になります。
がんの広がりが浅いため、お腹を大きく切開せず、切除範囲も小さくて済む手術法が適応されます。
主に内視鏡を使った手術法を行います(粘膜切除手術、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)、腹腔鏡手術、レーザー療法など)。これらの手術は体への負担が少なく入院期間も短めで、早期に社会復帰することができます。
早期がんの場合は切除手術だけで回復する場合が多いですが、がんがリンパ節に転移しているなど症状の広がりがみられる場合は、化学療法や放射線療法も組合せて行います。
がんに冒された箇所を周辺組織ごと大きく切除する根治手術(病気を完全に治すことを目的とした手術)が主流です。
胃を部分的に切除する方法と、全部摘出する方法があります。胃の一部を切除した場合は、残った胃や小腸を使って食物の通り道を再建します。
がんの転移が進んでいると、手術で全てのがんを切除するのは難しく再発の可能性も高まります。「がんの転移がみられる」、「高齢や全身の病気によって手術ができない」、「手術できない箇所にがんがある」といった重症ケースでは、抗がん剤による治療を行います。
入院期間は、胃を切除した場合は2〜3週間程度、胃を全て切除したなら1ヶ月くらいです。
退院後1〜2ヶ月で社会復帰できますが、手術後5年くらいは定期的に通院して経過の観察を行います。
胃がんはがんの中でも比較的治しやすい部類で、早期のがんであればほぼ100%完治します。
しかし広範囲に転移を起こしていると手術でも治すのは極めて難しく死亡率が非常に高くなります。そのため早期発見が何より重要です。
ただ、胃がんは初期の症状がほとんど表れないのが普通で、症状が出て発見される頃にはガンが進行していることが多いです。また慢性胃炎や胃潰瘍など、他の胃の病気と症状がよく似ているため、誤って診断されることもあります。
こうしたミスを減らすためにも、必ず年に一度は集団検診などで胃がんの検診(バリウム検査)を受けるようにしましょう。
4.その他
【受診科】
- 消化器内科/消化器外科/内科/消化器科/胃腸科
【背中の痛みを生じる胃の病気・障害】
- 胃炎、胃潰瘍
【胃がんの原因となる病気・疾病】
- 胃炎(萎縮性胃炎)