外科的療法(手術療法)の種類と特徴
背中の痛みの原因となっている障害や病気の種類によっては、体を一部切開して治療を施す「手術」が必要となる場合があります。
近年の医療技術の向上により、現在では内視鏡を使った体への負担の少ない手術や、手術以外の治療法も併用した効率的な方法が考案され、手術法の選択肢が増えてきました。
ここでは主な手術法について、どんな症状に対して適応されるのか、長所と短所、副作用などの特徴を解説します。
<目 次>
1.病気と手術法の関連表
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2.手術の種類と特徴
椎間板ヘルニアで最もよく行われる代表的な手術法です。
ヘルニアがある位置の背中側の皮膚を5cm程度切開し、神経を避け、靭帯や椎弓などの組織を一部削ったり切り開いたりしながら、奥にあるヘルニアの塊を切除します。ヘルニアは背中側に向けて突き出ていることが殆どであり、背中側から切開することから「後方椎間板切除術」とも呼ばれます。
出血がほとんどなく、体への負担も軽くて済みます。
手術は全身麻酔下で行われ、30分〜1時間程度で終わり、約90%は痛みが完治します。手術の1〜3日後から歩くことができ、入院期間は1〜2週間です。手術後2〜3か月間は軟性コルセットを装着します。座り作業なら術後2〜3週間、スポーツなら3ヶ月もするとできるようになります。
患部を肉眼で確認しながら行う「直視下手術」のほか、近年では直視下手術より更に小さな切開で手術ができる顕微鏡や内視鏡を使用した方法も多く行われるようになっています。これらは低侵襲手術と呼ばれます。低浸襲とは、手術時の切開の範囲を小さくして、患者の負担を軽くすることを意味しています。
- 内視鏡下ヘルニア摘出術(MED)
背中側の皮膚を1〜2cm切開してヘルニアのある箇所に細長い管を刺し、そこから内視鏡や、ヘルニアを切除するための細長い手術用器具を挿入して、モニターに映る拡大された映像を見ながら手術を行います。手術時間は1〜2時間程度。 - 顕微鏡下ヘルニア摘出術(MD)
背中を切開して患部を露出させ、ヘルニアを切除するという工程は通常の「直視下手術」と同じです。直視下手術では患部を肉眼で確認するのに対し、顕微鏡のように視野を拡大できる装置を使って手術を行います。視野が明るく拡大されるため、病変部周囲の血管や神経がはっきりと鮮明に見え、止血も容易です。傷口は内視鏡下手術よりやや大きくなりますが、直視下手術よりは小さくて済みます。従来の手術法に近い方法であり、内視鏡手術のように高度な技術が必要ないため、この方法を採用する医師のほうが多くなっています。
- 手術で生じる傷口が小さく切開部の回復が早い。また手術後の痛みも少なく、脊椎への影響も抑えられるなど、体への負担が少なくて済む。
(参考)体の負担の大きさと回復までの時間
:直視下手術 > 顕微鏡下手術 > 内視鏡下手術 - 視野が拡大されて微細な構造がよく見えるため、手術のミスや病変の見落としが少ない。
- 入院期間が短く、仕事やスポーツへの復帰が早い。
- 神経を包んでいる膜(硬膜)が手術中に破れる頻度がやや高い。こうなると手術後の安静期間が長くなったり、新たに切開して損傷を修復する必要が生じることがある(内視鏡手術)。
- やや特殊な技術を必要とする手術であるため、行える外科医が限られる(内視鏡手術)。
椎間板ヘルニアに対して行われる手術法です。椎間板の中身(髄核)を摘出することでヘルニアの圧力を下げ、間接的に神経への圧迫を軽くする方法です。
- 経皮的髄核摘出術(PN)
背中から椎間板に細い針状の管を刺して髄核を吸引します。健康保険が適応されます。 - 経皮的レーザー椎間板減圧術(レーザー髄核蒸散法・PLDD)
レーザーファイバーの先端を椎間板内に挿入して10〜15分ほどレーザーを照射し、髄核を熱で焼いて蒸発させます。健康保険が適応されないため自費負担になります。
レーザーで髄核を焼くPLDD
患部に局所麻酔を行い、X線透視によって椎間板の位置を確認しながら行います。
手術時間は30分〜1時間程度で、入院期間は1〜3日で長くても一週間程度です。手術後はその日のうちに歩いて帰宅することができます。
通常はすぐ日常生活への復帰できますが、椎間板が傷ついているため、重労働やスポーツへの復帰は慎重に行っていく必要があります。
これらの手術を行うためには、患者の年齢が比較的若く、ヘルニア自体が小さく、大きく飛び出していないこと、という条件があります。
ヘルニアそのものや飛び出している範囲が大きかったり、椎間板自体が著しくすり減っている場合には適応できません。また、脊柱管狭窄症を合併している場合にも行えないなど、手術可能な症例が非常に限られています。
- 皮膚の切開がほとんどなく全身麻酔も必要ないため、体にかかる負担が小さく、手術後に合併症を起こす確率も低い。
- 日帰り手術も可能であり、入院期間も短い。
- 髄核に弾力性がある若い人にしか行えない。適応されるヘルニアのタイプが制限される。
- ヘルニアそのものを取り除くわけではないため、痛みが取れにくかったり再発する症例もある(治療率は70%程度)
- 椎間板自体が損傷したり、レーザーの熱によって脊椎や脊髄を損傷するリスクもある。
脊椎(背骨)が不安定な状態になっている場合に、金属製の固定器具(インプラント)を用いて、骨が動かないように固定する手術です。足りない骨は患者自身の骨を移植したものや人工骨を使い、金属はチタンなどの軽くて丈夫なものが用いられます。
患部の背中側の皮膚を切開し、不安定な椎骨同士をネジ(スクリュー)や金属板を使って固定します。ネジの代わりにカギ型の金属フックを骨にかけたり、人口繊維でできたひもを骨にかけたりする場合もあります(日赤式脊椎制動術)。必要に応じて周囲の骨を一部削ったり、椎間板を摘出するなどして、神経への圧迫を減らす「除圧」も行います。
大きな手術で骨がくっつくまでに時間がかかるため、手術後1ヶ月は安静を保ちます。さらに3〜6か月はコルセットを着用します。
- 脊椎が固定され安定するため、除圧手術よりも痛みや神経障害の改善効果は高めです。
- 除圧手術よりも手術時間が長く出血も多いなど、患者にかかる負担が大きくなります。感染や金属の不具合などの合併症の発生率もやや高めです。
- 背骨(脊椎・腰椎)のズレやゆがみがある場合
椎間板ヘルニアの手術でヘルニアを取り除いた後や、加齢によって椎間板が劣化した場合に、椎間板の上下の椎骨がグラグラしたりズレたりすることがあります。そのほか、加齢によって脊椎が変性する変形性脊椎症、生まれつきの要因や腰の使いすぎによって背骨がゆがむ脊椎側弯症・脊椎後弯症などもあります。 - 脊椎を不安定にする手術を行う場合
脊柱管狭窄症の治療において、神経の圧迫を減らすために周辺の骨や靭帯を一部切除する「除圧固定術」を行うと、背骨の構造が弱く不安定になります。また、ヘルニアの再発手術を何度も行うと、その度に椎間板は薄く劣化していきます。こうした手術を行うことで脊椎の不安定性が更に悪化すると予想される場合には、脊椎固定術を同時に行うことがあります。 - 腫瘍や外傷のため脊椎が不安定になっている場合
主に脊柱管狭窄症の治療で行われる手術法です。
脊椎の内側には、神経の通り道である「脊柱管」という空間があります。その周囲の骨や靭帯が変形して脊柱管が狭くなると、中の神経が圧迫されて痛みやしびれを生じます。
除圧固定術は、脊柱管を狭めている骨などの組織を取り除き、脊柱管を広げることで神経の圧迫を無くすことを主な目的とします。
背骨の手術法としては一般的なものであり、大抵の医療施設で受けることができ、患者の負担も比較的軽めです。一方、脊椎の骨のズレや変形が大きい場合は十分な成果が得られなかったり、一時的に症状が改善しても再び悪化することもあります。
患部の背中側を切開し、神経を後ろ側(背中側)でおおっている骨(椎弓)や靭帯を切除して脊柱管を広げ、神経圧迫を取り除く方法です。後方除圧固定術は、椎弓の切除の仕方によって「椎弓切除術」、「開窓術」、「椎弓形成術」の3つがあります。
- 椎弓切除術
神経を圧迫している椎弓や椎間関節、靭帯などを広範囲に切除する方法。脊柱管の狭まりが大きかったり、複数箇所で起きている時に行う。組織が大きく削られることで、背骨の構造が弱く不安定になるという欠点がある。 - 開窓術(部分椎弓切除術)
椎弓や椎間関節、靭帯などの組織を、神経を圧迫している部分だけ切除する方法。脊柱管の狭まりが小さい、または狭まっている箇所が少ない場合に適している。後ろから見たときに神経の通路に窓が開いたような状態になるため「開窓術」と呼ばれる。 - 椎弓形成術
椎弓に切り込みを入れて開き、神経を圧迫している部分を切除した後、開いた骨を元に戻して糸などで縫合する方法。開いた隙間に患者自身の移植した骨や人工骨を挿入して脊柱管を広げる方法もある。椎弓切除術と同じく、脊柱管の狭まりが著しい場合に適している。
最近では、組織を温存できる「開窓術」や「椎弓形成術」がよく行われるようになっています。
また、これらの手術を内視鏡や顕微鏡を使って行うこともあります。「手術の傷が小さく出血も少ない」、「切除する組織を最小限にとどめることができる」といった長所がありますが、反面、全体的な状態を把握しにくいため、見落としが発生して神経の圧迫が十分に取り除かれないリスクもあります。
通常、手術後にコルセットを装着する必要はなく、手術の翌日にはベッドから起き上がることができます。入院期間は1〜2週間で、日常生活や軽い仕事なら2〜3週間でできるようになります。3か月くらいでスポーツも可能になります。
主に椎間板ヘルニアよって背中の痛みを生じている場合に行われる手術です。
患部の前方(おなか側)や横側を切開し、腸などの内蔵や大きな血管を避けながら脊椎と椎間板を露出させ、神経を圧迫しているヘルニアや骨を取り除く方法です。ヘルニアごと椎間板を取り除いたり、骨を部分的に削った場合は、代わりに他の部位から移植した骨や人工骨を使って固定します。比較的若い患者に対して行われます。
最近では後方固定術やが広く行われるようになっているため、この手術法が採られる機会は少なくなっています。
手術後2,3日は安静が必要です。骨の移植を行った場合、完全にくっつくまでに半年近くかかるので、その間は硬めのコルセットを装着して腰〜背中の動きをある程度制御し、脊椎を保護します。
手術によって患部の筋肉を損傷することがないので、痛みの改善効果は非常に高いです。一方、手術後の安静期間が長いため、患者の負担がやや大きいことが欠点です。
背骨(脊椎)において、硬い骨と椎間板が折り重なっている円柱状の部分を「椎体」といい、後ろに付属する骨を「椎弓」といいます。
この椎体が破壊されると、背骨全体の体を支える働きが著しく低下し、背骨のゆがみ、腰痛、下半身のしびれやマヒなど様々な症状を引き起こします。壊れた骨を取り除き、代わりに患者の骨盤などから採取した骨や人工骨を移植する手術法が椎体置換術です。
椎体がケガや事故によって損傷するケースのほか、化膿性脊椎炎、脊椎カリエス、脊髄腫瘍・脊椎腫瘍などの病気によって骨が破壊されることがあります。
患部に近い部分の皮膚を切開し、破壊された椎体と、その上下の椎間板を、ドリルやノミ、摘出用の鉗子などを用いて切除します。摘出後にできた空間に患者自身の骨や人工骨を移植します。チタンなどの金属製のプレート、ネジ、棒を使い、骨を周囲からしっかりと固定します。
骨がしっかり固定されれば、手術後2〜3日で起き上がれます。骨が完全にくっつくまでの4〜6か月間は重作用やスポーツを避ける必要があります。
脊椎側弯症や脊椎後弯症で曲がった背骨を、正常な形に矯正するための手術です。
側弯や後弯を起こしている部位の皮膚を背中側から縦に切り開き、骨から筋肉をはがして骨を露出させます。
必要に応じて骨を一部切除し、チタンやステンレス製のネジやプレートで骨を固定したり、金属製のフックや人口繊維でできたひもを骨にかけるなどして、背骨を正常な形に固定します。最後に他の部位から採取した患者自身の骨や人工骨を背骨の後ろに移植します。
大がかりな手術となるため、事前に患者自身の血液を蓄えておく自己血貯血を行い、これを輸血しながら手術を行います。
手術後は痛みもあるため2、3日は安静にします。入院期間は1〜2週間程度で、日常生活への復帰には3週間〜1ヶ月くらいかかります。軽い運動なら約2ヶ月後からできるようになり、激しい運動や重労働なら半年以上経ってからになります。
手術に用いる金属の性能の向上により、背骨の矯正効果はかなり高くなりました。ただ、手術自体は変わらず大がかりであるため、患者の心身の負担が大きくなることや、合併症が多めなのが難点です。合併症は神経障害が最も多く(20人に1人程度)、そのほか出血、感染、金属の不具合による再手術、骨の癒合不全、肺や腸の全身合併症などがあります。
- 骨棘切除術
加齢などによって脊椎を構成する骨「椎骨」がトゲ状に変形し、周囲の組織を刺激して背中痛を引き起こすことがあります(変形性脊椎症)。この突起部分(骨棘)を切除する手術です。 - 経皮的椎体形成術
骨折してつぶれた骨を取り除き、空洞になった部分にセメント状のリン酸カルシウムを注入して骨を強化する手術で、よくセメント治療と呼ばれます。高齢者の場合、骨粗しょう症などで骨がもろくなっており、骨折の自然回復が難しいことがあります。そうした場合によく行われます。
3.手術によって起こる主な後遺症・合併症
背骨(脊椎)の手術によって起こりうる最も重い症状の一つです。
多くの場合、神経の圧迫を取り除いたり、背骨の変形やズレを矯正したりする手術に関連して起こります。
脊髄から枝分かれしている細い神経(神経根)が障害されると、体の片側の、その神経が支配している領域に、筋力低下や感覚障害が生じます。中枢神経である「脊髄」や、神経の束である「馬尾神経」が損傷すると、両足の筋力低下、感覚障害、排尿・排便障害などのより重い障害が現れます(馬尾症状)。
神経の損傷が起こる確率は病気や手術の内容によって様々ですが、例えば「椎間板ヘルニア」や「脊柱管狭窄症」の手術では、0.5〜1%程度とされています。
手術中に傷口から細菌が入り込んで細菌感染を起こすものです。
感染が起こると、痛みや発熱、縫合した手術創からの膿(うみ)の排出などが見られます。感染を予防するために手術の前後には抗生物質が投与されますが、それでも脊椎の手術後に1〜5%の頻度で感染が起こるとされています。
体の抵抗力が弱い状態だと特に感染しやすくなります。「糖尿病などの全身疾患を患っている」、「栄養不足」、「体力不足」、「手術前に長期入院していた」、「心身にかかる負担が大きい大がかりな手術を受けた」、「皮膚病で皮膚の状態が悪い」などのケースです。
感染を起こした場合は、抗生物質の投与とともに、手術創を開いて内部を清浄にする外科的処置を行ったり、治療のために体内に埋め込んだ金属インプラント(固定器具)を取り除く必要が生じることもあります。
神経を包んでいる膜(硬膜)は手術中に破れることがあります。
比較的起きやすい合併症で、内視鏡を使った手術の合併症の約75%を占めます。硬膜が敗れると神経の周囲を満たしている液体「脳髄髄液」が流出するので、損傷部を細い糸で縫合します。適切に処置すれば大きな問題にはなりませんが、まれに髄液が漏れ続けて新たな処置が必要になることもあります。
インプラントを用いた手術の後に、インプラント自体に問題が起こることがあります。
「ネジが外れる」、「骨がうまく癒着せずにネジや棒が折れる」、「脊椎の間に挿入した人工骨がズレたり飛び出す」などです。不具合によって骨の矯正に影響が出たり痛みを生じた場合は再手術が必要になります。
骨折の治療や、骨を一部削ったり取り除いたりする手術では、骨と骨をつないでくっつける(癒合させる)固定術が行われます。
通常6か月以内に骨はくっつきますが、それを過ぎても癒合しない場合は骨癒合不全と判断します。症状があまり見られないこともありますが、痛みを生じたり矯正した部分が損傷している場合には再手術が必要です。
しびれを生じていた患者は、手術後もしびれが残るケースが非常に多く見られます。
これは長期間神経が圧迫されていたため、手術で圧迫を取り除いても神経の損傷が回復しないときに起こります。また手術中に神経をよけたりする操作が原因で神経が刺激されて新たな痛みが発生することもあります。
このようなしびれや痛みに対しては、薬物療法、神経ブロック療法、電気刺激療法などが行われます(参考:主な治療法)。
骨盤から足にかけての静脈に、血の塊である「血栓」ができるものです。
無症状のこともありますが、足がむくんだり傷んだり、血栓が肺にとんで呼吸が障害されたり、ときには命にかかわる肺塞栓(エコノミー症候群)を生じる場合もあります。脊椎の手術は患者がうつ伏せの姿勢で行う事が多く、太ももの静脈が圧迫されやすいために生じることがあります。
4.手術前の確認事項
手術は自分のからだにメスを入れ、大きな変化をもたらす治療法です。一度手術を行ってしまえば手術前の状態には戻れません。疑問点などを事前に医師に質問し、自分自身でよく納得してから手術を受けるようにしましょう。
- 自分の病状
手術を受ける際にはまず患者が自分の病気の状態をよく理解していることが大事です。病状がどのくらい進んでいて、手術以外にも治療の選択肢があるのかどうかも確認しておきましょう。 - 手術の内容と種類
どんな手術を行うのか、実施できる手術法は一つだけなのか、それともいくつか選択肢があるのか確認します。
選択肢がある場合、それぞれの手術法の長所や短所も確認し、できれば担当医師がどのくらいその手術を行った経験があるかも確認します。経験豊富な病院や医師ならば失敗は少なく、手術後の後遺症や合併症の確率も低くなるためです。
また、手術ごとにどんな合併症が起こりうるのか、その確率は一般にどのくらいかなどについて質問するとよいでしょう。
※病院によっては行えない手術もある
いくつかの手術法があっても、医師が必ずしも全ての選択肢を示すとは限りません。病院によっては必要な設備がないためにできない手術法もあります。また、高度な技術が必要とされるためあえて行わない病院もあります。
一般に医師が勧める方法は、患者の病状に合っているだけではなく、その病院の医師たちが習熟している手法でもあるため、合併症などの危険も少なく、それだけ安全と考えられます。しかし、患者の希望に沿わない場合もありえます。そこで、医師が勧める手術法以外にも選択肢があるのか、その病院では行わない手術法があるのかをたずねてみましょう。他の病院や医師を紹介してもらうこともできます。
※手術の上手な医師を見つけるには
日本脊椎脊髄病学会では、指導医制度を作り、同学会が認定した治療経験豊富な「脊椎脊髄外科指導医」をホームページで公開しています。トップページの「指導医リスト」から、指導医の氏名、所属医療機関などを調べることができます。
また日本整形外科学会では、実技試験を受けて資格を取得した「脊椎内視鏡下手術・技術認定医」の制度を作り公開しています。トップページの「専門医をさがす」の「認定医名簿」から、氏名、所属医療機関などを調べることができます。 - 手術によって症状はどのくらい改善するか、手術を行わないとどうなるのか
手術を行っても、必ずしも痛みやしびれが完全に治るわけではありません。手術後すぐに症状が改善することもありますが、一般的には痛みやしびれが数ヶ月間続き、徐々に良くなっていくケースが多いです。また病状によっては、手術後も痛みやしびれ、マヒなどが殆ど治らなかったり、数年後に再発する場合もあります。手術後にどれくらいの回復が見込めるのか、再発の可能性はあるのかなどを確認しておきましょう。
さらに手術を行わなかった場合についても確認しておきます。治りが遅くなるだけなのか、症状が悪化する可能性があるのか、日常生活に大きな影響を与えたり生命に関わることがあるのか、などです。また、手術のタイミングを逃すことで、痛みやしびれなどが完全にとれなくなるケースもあることを知っておきましょう。 - 手術後の経過について
手術後どのくらいの日数で退院でき、またいつごろ普通の生活に戻れるのか、軽い仕事、重労働、スポーツなどはいつごろからできるようになるのか、コルセットなどの装着が必要になるのか、といった点を確認しておきましょう。
こうした事柄について、自分だけでは判断・決断がつかなかったり、うまく理解できなかったり、伝えたいことをうまく表現できないこともあります。そうした場合は、相談の際に家族や知人に同席してもらうとよいでしょう。また、次に解説する「セカンド・オピニオン」を活用するのもよいでしょう。
セカンド・オピニオンとは、直訳すれば「第二の意見」です。具体的には、診断や治療方針について主治医以外の医師の意見を聞くことです。
医師から説明を受けても、情報も知識もない患者や家族にとっては、手術法を決定できなかったり、不安を覚えることが多いでしょう。ですので他の専門医にも相談して意見を聞きたいと思うのは当然のことです。
緊急に手術を受ける必要がないなら、別の医師からセカンド・オピニオンを得るのは良いことです。
「主治医に失礼になるのでは」と遠慮する必要はありません。インフォーム ド・コンセント(説明と同意)という考え方を分かっているまっとうな医師でしたら、治療法を決定するのは患者や家族であることを十分に認識しているからです。
セカンド・オピニオンを求める場合、まずは主治医に話して他医への診療情報提供書を作成してもらう必要があります。意見を求められた第二の医師は、これまでの治療経過や病状の推移を把握しないことには適切な助言をすることが難しいからです。
診療情報提供書を持参して紹介先を受診し、意見を求めることになります。この時、新たな検査を行うこともあります。