胸郭出口症候群とは(症状・原因・治療)
背中の痛みを引き起こす可能性のある病気の一つに「胸郭出口症候群(きょうかくでぐちしょうこうぐん)」があります。
ここでは背中の痛みとの関係を交えながら解説します。
1.胸郭出口症候群が疑われる症状
背中の痛みのほかに、以下のような特徴や症状が見られる場合、胸郭出口症候群が発症している可能性があります。
- 首から肩甲骨にかけて痛みがある
- 首から肩、腕へかけてひどくだるくなり、疲れやすさやしびれを感じる
- 小指や薬指の知覚異常(刺激を強く感じる、または鈍く感じる)
腕を頭上に伸ばしたり、首を曲げたりねじったりした時に症状がより強く現れます。
2.胸郭出口症候群とは 〜 原因と特徴
鎖骨と一番上の肋骨の間のすき間を「胸郭出口」といいます。
胸郭出口には脊髄から腕に伸びる神経の束と、心臓から腕へ伸びる動脈・静脈がひと束になって通っています。この束が狭いところをぬけていくため、何か異常があると圧迫を受けやすく、それによって神経や血管に関連する障害を起こします。そうした障害を総称して胸郭出口症候群といいます。
この病気は「なで肩で筋肉が少ない人」に起こりやすく、30歳前後の女性に多く見られます。
なで肩の人はもともと胸郭出口が狭く、さらに筋力が弱いと腕の重みで神経が圧迫されやすいからです。また、首が短く、いかり肩の人も胸郭出口が狭いので発症しやすい傾向があります。
胸郭出口症候群には4つの型があります。
@斜角筋症候群(しゃかくきんしょうこうぐん)
鎖骨のそばに斜角筋三角と呼ばれる神経血管束の通り道があります。斜角筋(首を前に傾けるための筋肉)がなんらかの原因で緊張状態になり、通り道が狭まって起こるものが「斜角筋症候群」です。
A頚肋症候群(けいろくしょうこうぐん)
先天性(生まれつき)の奇形の一種で、一番上の肋骨のさらに上にもう一組の肋骨を持つ人がいます。肋骨が多い分、胸郭出口が狭くなり神経血管束が圧迫されて起こるのが「頚肋症候群」です。
B肋鎖症候群(ろくさしょうこうぐん)
脊椎の変形、最上部の肋骨の形態異常、鎖骨の骨折後の変形などが原因で胸郭出口が狭まって神経血管束が圧迫されて起こるのが「肋鎖症候群」です。
C過外転症候群(かがいてんしょうこうぐん)
脇の下より胸側に、腕の運動に関わる小胸筋という筋肉があり、そのすぐ下を神経血管束が通っています。腕を頭上に伸ばすと小胸筋も伸びますが、このとき小胸筋に異常な緊張が生じて神経血管束が圧迫されて起こるのが「過外転症候群」です。
以上4つの症候群による症状はほぼ共通しています。
3.診断・治療・予防
診断は問診による鎖骨の骨折経験の確認、X線撮影(レントゲン)などを行います。その結果、更に詳しく調べる必要があれば、鎖骨下動脈へ造影剤を注入して造影X線撮影を行います。
また、4つの型に応じて、患者に一定の姿勢をとらせ、前腕の外側にある動脈(橈骨動脈)の脈動の状態を調べる検査方法もあります。
治療法は4つの型にそれぞれ対応した方法がとられますが共通する部分も多いです。
基本的には、筋肉の緊張をとるために、麻酔剤や弛緩剤による薬物療法や運動療法がとられます。その他、患部を温める温熱療法が取られることもあります。どうしても治りにくいものには、最終的な処置として筋肉を一部切除する手術が行われることもあります。