姿勢や動作を正して背中痛対策
背中の痛みを引き起こす大きな要因に、「不適切な姿勢や動作」があります。
普段の何気ない姿勢や動作でも、思った以上に肩・首・背中・腰などに負担をかけます。それが積み重なることで筋肉などの組織が疲弊して痛みを生じます。
特に背中の痛みは、腰や肩の疲労が原因となって起こることが多いのです。
体の負担が少ない理想的な姿勢や動作を身につけ、痛みを改善・予防しましょう。
<目 次>
- 姿勢と動作(良い例・悪い例)
立ち姿勢、歩き方、座り姿勢、寝るときの姿勢、重い物の持ち上げ方、家事を行う時の姿勢など - その場で気軽にできるストレッチ
1.正しい姿勢や動作
- 背筋を伸ばしてアゴをひく
→頭の上についた"ひも"で上に引っ張られているようなイメージ。上半身は力を抜いて自然にする。背中に力が入り背筋をピンと張りすぎた状態も、背骨の自然なカーブが消えるため腰に良くない - 肩の力を抜いて腹筋に力を入れる
- ひざは力をいれずに軽く曲げる
- 足の親指のつけ根に体の重心を置く(足の親指で立つ気持ちで)
- 背中を丸めて前かがみになったり(猫背)、胸や腰を反りすぎたり、お腹を突き出した姿勢は背骨に無理な力が加わり痛みの原因になる
- 背筋とピンと伸ばし、膝もしっかり伸びた状態で、かかとから着地する。腰とひざにかかる負担が少ない歩き方です
- 歩くのに合わせて自然に手を振り、大股で歩く
- 理想的な歩き方ができていると、体が左右にブレず、頭も上下に動かず一定の高さを保つのが特徴です。音で表現すると「カツカツカツ」という感じ
※日本人に多い「ひざ歩き」
- 背中を丸め、常にひざが軽く曲がった状態で、上体を揺らしながら歩く「ひざ歩き」は日本人に多く見られます。歩くたびに頭が上下に動いて、足を踏み出すたびに右へ左へと全身が揺れるヒョコヒョコとしたく歩き方です。 見た目にも悪く、腰と膝に余計な負担がかかります。
- アゴは軽く引き、首に余計な力は入れない
- 背もたれはやや高めで、角度はやや後方に傾いた状態がベスト。背もたれの形はゆるいカーブを描き、背中のカーブに合ったものが良い。合わない場合は間にクッションなどを挟む
- 腰を背もたれでしっかり支持する
- イスに深く腰かけて、ほぼ直角になるように座る
- イスの高さは、足の裏がしっかり床につき、その状態でひざの角度が直角くらいに曲がるくらいが良い。イスが高すぎる時は台座などの上に足を置く
- パソコンのモニターを見る時は、視線が水平よりやや下を向くくらいの高さにする。高すぎたり低すぎたりすると首に負担がかかり、首痛や肩こりの原因になる
- 正座
自然と背筋が伸びるため、腰や背中にやさしい座り方です。背中が丸まらないように注意しましょう。
反面、ひざへの負担は大きいです。お尻の下に座布団などを挟むと、背骨の自然なカーブが維持しやすいほか、ひざの負担も減ります。 - あぐら
背中が丸まりやすいため、あまり腰と背中によくありません。背筋を伸ばして座れは負担を減らせますが、そうすると上体のバランスをとるのに腰と背筋が酷使されるため、長時間座るのには向きません。背もたれの硬い座椅子や壁にぴったりと背中をつけると負担を減らせます。 - 足を投げ出して座る
背中が丸まりやすいためよくありません。背中を壁にぴったりつけて寄りかかるようにすると良いでしょう。 - 横座り
腰をねじるため腰の負担が大変大きく、痛みやゆがみの原因となります。背中やひざにも良くないため絶対にやめましょう。 - 立てひざ座り
背中が丸まり、腰にもひざにも良くない座り方です。 - 体育座り
両腕でバランスをとれるため楽に思える姿勢ですが、背中が丸まってしまうほか、お尻への負荷が大きく骨盤がゆがみやすいなど、やはりよくありません。
- 横向きに寝るのが最も腰と背中の負担が少ないためオススメです。
腰痛があるなら痛む側を下にして横になり、ひざを90度くらいに曲げましょう。腰の下にタオルなどクッションになるものを置くと更に楽になります。 - 仰向けに寝る場合は、腰が楽になる姿勢を維持します。膝を立てると楽になるなら、膝を軽く曲げてその下に座布団やクッションを入れます。足を高く上げると楽になるなら、座布団やクッションの上にふくらはぎを乗せます。
- うつ伏せに寝るのは、腰〜背中の反りが大きくなって負担がかかるので止めましょう。
- 敷布団(マットレス)は軟らかすぎず硬すぎず、体が軽く沈み込むくらいだと背骨の自然なカーブが維持できるため、腰・背中の負担が小さくなります。軟らかすぎると背中が丸まり、固すぎると反りが大きくなって負担がかかります。
- 枕も同様の理由から軟らかすぎるのはよくありません。また、厚みがありすぎて首の位置が高くなるものもダメです。適度な硬さで、長期間使っていてもへたりにくい素材のものを選びましょう。
重いものは、一度ひざを曲げて腰を下ろし、荷物を体に引き寄せて(できれば体に密着させて)、からだ全体の力を使ってゆっくりと真上に持ち上げます。
上半身を倒して腕の力だけで持ち上げようとしたり、荷物を体から離して持ったりするのは厳禁。腰に大変大きな負担がかかり、ぎっくり腰などの急性腰痛を起こす危険性が高まります。
掃除や洗濯、洗面台で顔を洗うなど、日常生活においては「前かがみ」や「中腰」といった、腰や背中に負担のかかる姿勢をとることが多いです。できるだけこうした姿勢をとらず、背筋がまっすぐな状態を保つよう普段から意識しておく必要があります。
- 前かがみになる時は、腰より先にひざを曲げる
- イスを利用したり、足台を使うなどして前かがみを防止する
- 中腰で作業をせず、片ひざや両ひざをついて行う
2.その場で気軽にできるストレッチ
良い姿勢であっても、座りっぱなしや立ちっぱなしなど、同じ姿勢を長時間続けていると筋肉が緊張して疲労がたまり、肩・背中・腰の痛みにつながります。
およそ30分に一度は姿勢を変えたり、軽く体を動かすことで痛みの予防になります。
職場でも手軽にできる首、肩、胸、背中、腰のストレッチ法を紹介します。
※一つ一つの動作はゆっくりと行い、強い力を入れずに動かせるギリギリのところまで動かします。
筋肉が伸びた状態で止めて、そのまま10〜20秒キープするようにしましょう。
- 正面を向いた状態からゆっくり右を向きます。伸びきった状態で5〜10秒間静止します。続いて左も同様に行います。
- 顔を正面に戻し、今度はゆっくりと下を向き、5〜10秒間静止します。続いて上を向いて同様に行います。
- 上を向いた状態から、首をゆっくりと右へ一回転させます。続いて上を向いた状態から左に一回転させます。
- 顔を正面に戻し、今度は正面を向いたまま頭をゆっくり右に倒し、5〜10秒間静止します。続いて左に倒します。
※必ずこの順序で行ってください。最初に「4」の動きを行うと、首が「ボキッ」「バキッ」と大きな音を立てることがあります。
何となく固さやコリが取れているような気になりますが、大きな音がするほど首の骨(頚椎)に大きな衝撃を与えます。これを続けていると、頚椎やその内部を通る中枢神経「脊髄」が損傷し、変形性頚椎症や頚椎椎間板ヘルニアといった首の障害を起こしたり、最悪の場合からだの麻痺などの重篤な障害を引き起こしますので絶対にやめましょう。
- 図のように右腕を胸の前に伸ばし、左腕で下から抱え込んで右腕を胸の方に引き寄せます。続いて左腕も行います。
- 右腕を真上に上げたら、腕が首の後ろにくるようにひじを曲げます。左手を使って右ひじを下に押します。この時、顔を起こして正面を向くようにするとより効果的です。続いて左腕も行います。
- 両肩を耳に近づけるように持ち上げます。力が入った状態で3〜5秒程度キープし、そのあと脱力して肩をストンと落とします。これを5〜10回繰り返します。
- 両腕を真上に伸ばして手を組みます。そのまま手のひらをぐるっと裏返し、上に向かって伸びをします。そのままの姿勢で体を左右に倒すと、体の横側(体側)や腰を伸ばすこともできます。
- 頭の後ろで両手を組みます。そのまま両ひじを左右に開いていきます。数秒キープした後にひじをたたんで元の状態に戻ります。
- 両腕を腰の後ろに回して手を組みます。そのまま両腕を上に持ち上げていきます。数秒キープしたら下に下ろします。
- 両腕を正面にまっすぐ伸ばして手を組みます。そのまま"おへそ"をのぞき込むように背中を丸めていき、同時に両腕を前に伸ばせるだけ伸ばします。イスに座ったままでも行えます。
- 立った状態でも座った状態でもできます。腰に手をあてたり、背もたれに寄りかかるなどして、腰への負担を和らげながら行いましょう。
- イスに座った状態で左足を右足の上に組み、右手で左ひざを右に押します。同時に上半身は左にひねって腰を回します。顔も左を向くようにしましょう。足を替えて逆方向も行います。
- イスに座ったまま腰を丸めて前屈します。イスが後ろに滑らないように注意しながらゆっくり行いましょう。
- 壁に向かって両足を前後に大きく開いて立ちます。前のひざを曲げ、両手で壁を押しながら、腰をゆっくりと少しずつ反らせていきます。腰、股関節、アキレス腱を伸ばせる体操です。
- 両足を肩幅〜くらいに開き、壁に両手を付けます。お尻を後ろにつきだし、下を見ながら肩〜背中を下に沈めます。壁からなるべく離れて壁に寄りかかるようにすると背中が伸ばしやすくなります。主に肩、背中、腰を伸ばす体操です。