からだを温めて痛みを和らげる

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背中の痛みの対策と予防 解剖図イラスト:背中の骨・筋肉背中の痛みの体験談

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体を温める治療法『温熱療法』について

「温熱療法」とは、患部を温めることで血液の流れ(血行)を良くする治療法です。

腰や膝が痛い時は、患部を温める(場合によっては冷やす)と楽になると言われます。
なぜ温めることで痛みが軽減されるのか、医療機関における治療法や自宅でできる方法にはどのようなものがあるのか、「温める」のか「冷やす」のか、その判断基準などついて解説します。

<目 次>

  1. 温熱療法の効果と痛みが治まるメカニズム
  2. 医療機関における温熱療法
  3. 自宅で自分でできる温熱療法
  4. 温めるのか冷やすのか
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1.温熱療法の効果と、痛みが治まるメカニズム

◆「冷え」は痛みを強め、回復も遅らせる

背中の痛みの主な原因は、筋肉疲労、骨の異常、ケガ、神経の障害などですが、多くの場合「炎症」が痛みの元となっています。

炎症とは、身体の組織が「圧迫」、「衝撃」、「熱さ」、「辛さ」など、なんらかの強い刺激を受けた時に、身体を守るために起きる自然な防御反応のことです。
血管が広がることで患部が赤く腫れあがったり、熱を帯びたり、ズキズキ傷んだり、調子が悪くなったりといった症状が現れます。
炎症は筋肉、靭帯、骨、軟骨(椎間板)、関節、神経などあらゆる組織で発生します。

炎症は様々な要因によって悪化します。
刺激が取り除かれずにいつまでも続いたり、新たな刺激が加わることで炎症が悪化して痛みが強まります。
また、刺激がおさまっても炎症自体が炎症を悪化させる化学物質の放出を促し、更に悪化するという悪循環に陥ることもあります。

こうした炎症や痛みを悪化させる要因の一つが、「患部の冷えに伴う血行不良」です。

冷えた箇所は血液の流れ(血行)が悪くなり、血液内の炎症を強める化学物質や疲労物質が流れ出てゆかず損傷のある箇所にとどまるため、放っておくと腫れや痛みはどんどんひどくなり、損傷した組織も回復しにくくなります。
また、冷えによって筋肉は固くこわばり柔軟性がなくなります。すると背骨を支える働きが弱まり、腰や背中にかかる負荷が増大して痛みを発症しやすくなります。

◆血行を促進することで痛みを解消する

温熱療法の目的は、患部を温めて血行を良くすることです。

血液の流れが良くなり、組織の新陳代謝が活発になることで、痛みの元となる化学物質が取り除かれて痛みが軽くなります。疲労物質も流れ出ていき、疲労や損傷の回復が早まります。また、筋肉や関節のこわばりがとれて動きが良くなり、体を支える働きも高まります。

こうしたことから、温熱療法は背中や腰まわりの冷えが痛みを悪化させているようなケースにおいて特に効果的です。

血液の流れと痛みの関係

2.医療機関における温熱療法

病院などでは体を温めるのに「ホットパック」、「電気」、「超音波・赤外線・レーザー」などが利用されます。
こうした機器は、細胞のより深い部分まで温めることができるので、家庭で行う簡易な温熱療法よりも高い効果が得られます。

マイクロ波治療器
画像:マイクロ波照射器
ホットパック
画像:ホットパック

  • ホットパック
    ジェル状の温熱剤が入ったパック。熱湯などで充分に温めてから腰に巻きつけるなどして使う。保冷剤の温熱版のようなもので、長時間温かい状態を維持できる
  • 電気治療
    マイクロ波、低周波、高周波など照射して体の内部から温める
  • 超音波、赤外線、レーザー
    専用機器から照射して体の内部から暖める

※体内にペースメーカーや、骨折を固定するための金属、人工関節などが入っている部位には、超音波やマイクロ波を当てることはできません。

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3.自宅で自分でできる温熱療法

自宅でも色々な方法で手軽に体を温めることができます。

◆入浴・シャワー

ゆっくりと入浴して背中を温める

毎日お風呂に入って全身を充分に温めましょう。
ただお風呂に入るだけでも体は十分温まりますが、そこにひと手間加えるだけで、より温熱効果を高めることができます。

温熱効果を高めるためのポイント

  • 時間と温度
    身体を芯から温めるには、ある程度長い時間入浴する必要があります。
    ポイントは「自分が心地よいと感じる温度」でゆっくり入浴することです。少しぬるめに感じる温度(38〜40度くらい)で、途中湯船から出ても良いので合計20〜30分くらいやや長めにお湯につかることで、体に負担をかけずに体の奥から温めることができます。

    無理に熱いお湯に入ってはいけません。高温による強い刺激で体や心臓に負担がかかり心拍数も大きく上がり、リラックス効果もあまり得られません。長く入ることもできずすぐにのぼせてしまいます。また、交感神経(※)を刺激しすぎてストレス解消効果が薄れるだけでなく、脳卒中の危険性も高まります。
    交感神経:心拍促進、血圧上昇などにかかわる自律神経系統

  • 頻度
    可能であれば朝と夜の1日2回入浴するとより効果的です。

  • 慢性的な痛みに効く入浴法
    温水と冷水を交互に使う「交代浴」がオススメです。温熱効果が高く、慢性痛のほかに冷え性にも効果的です。
    やり方は、はじめにぬるめのお湯に5〜10分ほど入って体を温め、次に15〜20度くらいのやや冷たい水を患部にかけます。再びお湯に3〜4分つかって、また水をかけて。これを5〜7回繰り返します。
    これにより、血管の拡張と収縮が繰り返されて血行がよくなり、お風呂の温熱効果を高めることができます。体の芯から温まってポカポカしてくるのが感じられます。

  • その他
    お風呂に長くつかるのが大変なら、下半身だけお湯に入る「半身浴」でも大丈夫です。上半身が冷えないようにタオルなどをかけておきましょう。
    冷え性の人は湯冷めしないように就寝前に入浴して体が温まった状態で布団に入ったり、湯船の中でマッサージを行うなど工夫すると、より効果を高めることができます。
注意事項

  • 入浴中はかなり汗をかきます。長く入浴するときは水分をしっかりとりましょう
  • のぼせを防ぐため、ときどき浴槽から出たり半身浴も行いましょう
  • マッサージやストレッチングは体が十分温まってから行いましょう
  • 足を滑らせないように気をつけましょう
◆蒸しタオル、カイロ、温シップ

イラスト:ホッカイロ

蒸しタオルは、熱めのお湯を絞ったり電子レンジで温めたタオルをあてたり巻いたりします。
冷めやすいため長時間の使用には不向きですが、準備の手間がほとんどなく、手軽に繰り返し行えるのが利点です。

カイロや温シップを患部にあてて温めるのもよく行われる方法です。
1回の使用で10時間程度効果が持続するため使いやすいですが、カイロは皮膚に直接あてると低温やけどになる恐れがあるので、衣類やタオルの上からあてた状態で固定しましょう。

◆腹巻きやサポーター、コルセットなど

腰や背中を保温する装具

これらは外気による冷え対策に有効です。家庭内ではもとより、職場や冷気にさらされる外出時にも忘れずに着用しましょう。乗り物や建物内では、冬の寒い時期だけでなく夏でも冷房で冷えすぎることがあるので一年中使う機会があります。

サポーターは普通のものでも保温効果がありますが、他にも遠赤外線効果のあるもの、カイロを入れるポケットの付いたもの、腰を支える金属製の支柱やバンドつきのタイプもあります。
支柱入りタイプは姿勢をよくしたり腰や背中にかかる負担を軽減できるため、姿勢の悪い人や、椎間板ヘルニアなど脊椎の変性が進んだ人におすすめです。ただし、支える効果の大きいサポーターやコルセットを長期間使用すると腰や背中の筋力を衰えさせてしまう恐れもあるので、どうしても使い続けたい場合はサポート力の弱い薄手のものを選びましょう。

注意事項

  • サポーターやコルセットは市販品も含めて種類が多いため、迷ったらどんなタイプがよいか医師に相談して選ぶとよいでしょう。
  • 腰に巻きつけるタイプのものは、ゆるすぎてもダメですが締め付けを強くしすぎるのもよくありません。きつすぎると血行が悪くなって逆効果ですし、腰の曲げ伸ばしもしにくくなります。

4.温めるのか冷やすのか

痛みに対する対処法には「温める」と「冷やす」の2種類があります。どちらでもよいとか、どちらの方が効果が高いといったことはなく、症状ごとに使い分けねばなりません。

◆温めたほうがよいケース

温めたほうがよいのは、既に解説したように「血行の悪さ」が痛みを悪化させている場合です。

血行不良からくる痛みは、急で激しい痛みではなく、重苦しく鈍い痛み、つまり慢性的な背中痛で見られる痛みです。多くの場合、患部のコリや張り、ダルさ、疲れなどを伴います。

患部の腫れや熱感が見られない時は、入浴やカイロなどで温めて血液の流れを良くするのが効果的です。逆に冷やすと血行が悪くなり、症状が悪化します。

◆冷やしてよいケース

冷やした方がよいのは、炎症が急激に広がって患部が熱をもっている場合です。

捻挫・打撲・骨折などの突発的なケガに見られ、急性の炎症によって急で激しい痛みを伴う場合が多いです。ぎっくり腰などが良い例です。
痛みが激しい場合や、患部が腫れあがって熱をもっている場合は冷やす、と覚えておきましょう。

氷嚢で冷やす

熱をもっている箇所やその周辺を冷やすことで、炎症の広がりや内出血を抑えて痛みを軽減することができます。背中を激しく打ったりケガをした場合は、できる限り早く冷やすことが重要です。

冷やす場合には、氷のう(アイスバッグ)や、水・氷を入れたビニール袋を使います。
氷の入った薄いビニールでは冷たすぎて凍傷になる恐れがあるため、直接患部に当てずにタオルなどの上から当てます。15〜20分冷やして10分休みを繰り返しましょう。これを腫れや痛みが治まるまで毎日続けます。急性の炎症は長くても1週間程度でおさまるので、いつまでも症状が改善しない時は病院で診察を受けてください。

◆まとめ

背中の打撲や捻挫、ケガなど、急で激しい痛みが見られる時は冷やしましょう。急性の痛みでは患部が熱を持ったり腫れたりすることが多いです。

痛みや腫れ、熱感が落ち着いてきたら温めましょう。さほど強くない鈍痛が長く続く「慢性痛」の場合も温めるのが良いです。もし温めることで痛みが増したり腫れてくるようなら冷やしましょう。

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