民間療法・代替療法の種類と効果

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背中の痛みの対策と予防 解剖図イラスト:背中の骨・筋肉背中の痛みの体験談

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民間施設における治療法は背中痛に効く?

背中の痛みを治療する際の選択肢は様々です。
医師が常駐し、国や県で認定された医療機関である病院や診療所における治療が基本ですが、それ以外にも、「整体」、「マッサージ」、「カイロプラクティック」など、民間において治療行為を行う施設やサービスがたくさんあります。

これらは民間療法代替療法と呼ばれるものです。

民間療法の種類、見込まれる治療効果、医療機関との違い、利用の際の注意点などについて解説します。

<目 次>

  1. 民間療法・代替療法の種類と特徴
  2. 背中痛改善の効果は?
  3. 利用時のポイント・注意点
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1.民間療法・代替療法の種類と特徴

腰、肩、背中などの痛みに対して医療類似行為を行う技術やサービスとして、主なものに「整体・整骨」、「マッサージ」、「カイロプラクティック」、「鍼灸」などがあります。

1-1.整体・整骨・接骨
◆整体

整体イメージ画像

整体の目的は、からだ全体の骨格や関節のゆがみ・ズレを調整して正常な状態に直す(矯正する)ことです。
施術者の手足や補助道具を使い、患部やその周辺を揉んだり、つぼを刺激したり、筋肉を伸ばしてストレッチを行ったりすることで、筋肉の緊張をほぐし、身体のバランスを改善します。

筋肉の緊張を揉みほぐすことで、からだのゆがみを矯正する

<資格・健康保険について>

「整体師」という民間資格があります。ただし、整体師を名乗って働いたり、整体院を開業するのに資格免許が必要なわけではなく、無免許でも行えます。治療に健康保険は適用になりません。


◆整骨・接骨

整骨の目的は、骨の固定や整復(※)によって、骨折、脱臼(だっきゅう)、打撲(だぼく)、捻挫(ねんざ)などのケガを治療することです。施術者の手足や補助道具を使って施術します。柔道で生じたケガなどを治療するために始まった歴史の古い手法です。
「整復」:骨折や脱臼の生じた箇所を、もとの正常な位置になおすこと

主に骨を固定したり、骨や筋肉、関節などを動かすことで異常の生じた箇所を元に戻す

<資格・健康保険について>

施術・治療を行うためには「柔道整復師」という国家資格が必要です。3年の専門教育を受けた後に国家試験に合格することで取得できます。
健康保険は対象になる場合とならない場合があります。対象となるのは、急性などの外傷性の打撲・捻挫・および挫傷(肉離れなど)・骨折・脱臼の場合のみです。骨折・脱臼については医師の同意が必要です(応急処置を除く)。単なる肩こりや筋肉疲労では対象になりません。


1-2.カイロプラクティック

カイロプラクティックイメージ

体の土台である背骨(脊椎)や骨盤がゆがんでいると、背中や腰の痛みのほか、頭痛、肩こりなど様々な体調不良が置きます(参考:背骨の歪みと腰痛)。
カイロプラクティックでは、脊椎を矯正し、正常な位置・形状に戻すことを目的とします。そうすることで体全体のバランスがよくなり、一部に過剰な負担がかかることがなくなり症状の改善が期待できます。主に施術者の手足や補助道具を使って矯正を行います。

体の土台(脊椎・骨盤)を整えることで、体全体ののバランスをよくする

<資格・健康保険について>

日本における資格はありません。施術、開業、学校の設立も自由にできます。治療に健康保険は適用になりません。
一方海外では専門の大学があり、卒業時に職業学位が取得できます。卒業後にカイロプラクターとして働くには極めて難しい資格試験に合格しなくてはならず、欧米では医師と同じぐらいの社会的地位があります。


1-3.マッサージ

マッサージのイメージ画像

ここでは国家資格が必要な「あん摩・指圧」について解説します。

筋肉を揉みほぐしたり、指でからだのツボを刺激(指圧)することで、血液やリンパ液の流れを良くし、新陳代謝を活発にします。それによって筋肉のコリや張りを和らげたり、関節の動きを良くするなどの効果があります。そのほか、からだの機能をコントロールする「自律神経」の働きを良くして内臓の働きを活発にする作用もあります。

特に資格が必要なく、一般的に「マッサージ」に分類されているものには、リンパマッサージ、アロママッサージ、リフレクソロジー、タイ式マッサージなどがあります。

筋肉をほぐし体の血行を良くすることで、筋肉疲労や関節の動きの悪さを改善する

<資格・健康保険について>

「あん摩マッサージ指圧師」という国家資格があります。3年間(大学は4年間)の専門教育を受けた後に国家試験に合格することで取得できます。施術・治療を行うには国家資格が必要ですが、実際には資格を持たない施術者も多くいるため注意が必要です。
健康保険は一定の要件を満たす場合のみ適用になります。おおざっぱに言うと、筋肉や関節に障害があり、その治療のためにマッあん摩・マッサージの施術が必要と医師が認めている時です。施術時には医師の同意書が必要になります。疲労回復や慰安目的の場合は保険適用外です。


1-4.鍼灸(しんきゅう)

画像:針と灸

東方医学の方法論に従って、針で刺したり灸をすえることで体のツボを刺激して筋肉の緊張を和らげます。筋肉がほぐれると血液の流れ(血行)が良くなり痛みが和らぎます。 筋肉痛や神経痛による痛みに効果があります。

血液中の血小板が減っていたり、脳梗塞の予防などのために血液を固まりにくくする薬(抗血栓薬、抗凝固薬など)を服用している人は、鍼灸治療は避けるべきとされています。

ツボを刺激して体の血行を良くすることで、筋肉の緊張や痛みを和らげる

<資格・健康保険について>

施術・治療を行うためには、「鍼灸師」という国家資格が必要です。3年間(大学は4年間)の専門教育を受けた後に国家試験に合格することで取得できます。
健康保険は特定の病気の治療時のみ適用になります。神経痛、リウマチ、慢性腰痛、ぎっくり腰、五十肩、頚腕症候群、頚椎捻挫後遺症などです。疲労回復や慰安目的の場合は保険適用外です。

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2.背中痛改善の効果は?

既に紹介したような民間療法や代替療法は、実際のところ背中の痛みに対してどの程度の改善効果が期待できるのでしょうか。

結論から言うと、

痛みの種類や原因によっては一定の効果あり。ただし医療機関で行われる治療以上の効果があるとは言えない

参考までに腰痛の例になりますが、腰痛の定義、診断、治療などに関して科学的証拠をもとに開設された「腰痛診療ガイドライン」においても、"代替療法は急性および慢性腰痛に対して、他の保存的治療(手術以外の治療法)よりも効果があるとはいえない"とされています。

◆どんな症状に対して効果的なのか

イラスト:筋肉をほぐす

民間療法は手技を使った治療法(徒手療法)が中心です。
筋肉をほぐしたり、ツボを刺激して血行を良くすることで痛みを和らげるものが多いため、背中のコリや張りをともなう筋肉痛や捻挫など、筋肉疲労を原因とする背中痛、特に痛みが出てからあまり日数の経っていない急性の痛みに対して一定の効果があります。

また、マッサージなどで気持ちよさ、心地よさを感じることで痛みを改善する効果も見込めます。痛みが快感によって軽くなることは科学的にも証明されています。
【参考】:快感は痛みを和らげる(外部リンク)

逆に、椎間板ヘルニアのように、背骨や椎間板の変性を原因とする痛みや、痛みが長期間続いている慢性痛に対しては、一時的に痛みを軽くすることはできても完全に解消するのは難しいことが多いです。ただし、カイロプラクティクなどで背骨の矯正を行うことで痛みが解消されるようなケースもあります。

◆科学的根拠に乏しい

民間療法や代替療法が、筋肉疲労による痛みや急性の痛みに対して一定の改善効果をもつのは確かです。しかしそれ以外の背中の痛みに対しては明らかな効果は認められおらず、はっきり有効であるとはいえません。いずれの手法も十分な研究が行われておらず科学的な証拠が乏しいのが実情です。しかし効果が無いという根拠も提示されていません。

◆科学的根拠がない治療法でも痛みが消える理由

必ずしも明らかな科学的根拠がない治療によって背中の痛みが消える理由はいくつか考えられます。

1.プラセボ効果・ストレス解消効果

「プラセボ効果」とは、「偽薬効果」や「プラシーボ効果」とも呼ばれ、医療の世界ではよく知られています。
薬効成分の入っていないニセ物の薬を「大変よく効く薬で、確実に痛みが取れますよ」といった風に大げさに説明して飲んでもらうと、実際に効果が現れるというものです。
「病は気から」という言葉があるように、その人の気持ちの持ち方や、その時どきの心理状況によって、特定の症状が現れたり、病状が良くなったり悪くなったりするのは決して珍しいことではありません。

<プラセボ効果のしくみ>

痛みの信号の伝達

体が傷ついた時、痛みの信号は神経を伝って流れます。
信号が脳まで伝わってはじめて「痛み」を感じるのですが、人間の脳にはこの痛みの信号を抑制するシステムが備わっています。このシステムを「下行性疼痛抑制系」といい、システムが活性化すると痛みを感じにくくなり、うまく働かなくなると普段は感じないような小さな痛みでも大きな痛みとして感じられるようになります。

システムが活性化するのは、前向きな気持ちになったり、達成感や高揚感を感じたり、好きなことをして楽しさや気持ちよさを感じた時です。一言で言えば「気分が良い時」です。こうした時に脳からドパミンやエンドルフィンといった脳内物質がたくさん分泌されることでシステムが活性化します。

逆に、長期間ストレスや不安のある状態が続くと、この痛みを抑えるシステムがうまく働かなくなって慢性的な痛みを発症しやすくなります。
精神的なストレスが原因で痛みを発症している場合、マッサージや鍼灸を受けて気持よさ・心地よさを感じることでストレスが解消され、痛みを制御するシステムが正常に戻り、痛みが改善されるケースがあります。

<前向きな気持ちの重要性>

通常の内服薬の効果も、その40%程度はプラセボ効果であると言われます。手術に至っては約70%になるともいわれます。プラセボ効果は治療に対する期待や思い込みが強いほど効果も大きくなるのです。
「100円の安い薬です」と説明するより、「1個1万円もする高価な薬です」と言ったほうがよく効くという報告もあります。全く同じ治療を受けても、診察したのが有名な医師の場合だと治療後の経過が良好だったりします。さらにプラセボ効果はその時だけにとどまらず長続きするのです。

逆に、「この治療は効かない」、「私の痛みは決して良くならない」などと思いながら治療を受けると、治療効果はよくありません。さらに医療や医師に不信を抱いていたり、仕方なく治療を受けているような時も治療効果は悪いです。

2.自然に治っている

背中の痛みの大半は、特別な治療を行わなくても自然に治ります。筋肉痛や捻挫なら1週間程度、その他の痛みでもだいたい1ヶ月もすれば大分良くなります。
完治までにやや時間のかかるケースでは、民間療法によって一時的に症状が抑えられている間に、時間の経過によって自然に治ったものを民間療法の効果だと信じてしまうことも少なくありません。

3.科学的根拠はないが、本当に効果がある

必ずしも「科学的根拠がない」=「治療の効果が低い」とは限りません。科学的根拠を明らかにするには、莫大な時間とお金がかかります。現時点では科学的根拠がないとされている治療の中にも、将来、科学的根拠が証明される可能性のある治療法が存在しているといえます。


たとえ科学的な根拠に乏しい治療法であっても、患者が「これが効く」と思って通っていて、プラセボ効果によって実際に気持ちよかったり、痛みが楽になるのであれば、それは問題無いと思います。
ただし、背中の痛みの原因は色々ありますので、病院には行かず、ずっと民間療法だけというのはよくありません。背骨や椎間板などの状態を画像検査で確認したり、内臓の病気からきている背中痛ではないかということを調べたりすることは必要です
医学的な診察を受けた上であれば、民間療法によって気分が良くなるならストレス解消にもなりますので、続けてもかまわないと思います。結果的に痛みが良くなればそれでいいのです。


3.利用時のポイント・注意点

民間療法・代替療法を受ける際には、いくつか気をつけるべきポイントがあります。

◆はじめは整形外科へ

病院で診察を受ける

背骨が変形していたり、神経が損傷していたり、内蔵の病気が関わっていたりと、背中のいみ痛の原因にはいろいろあります。こうした場合、民間療法で完治を目指すのは難しいです。

痛みの程度に関わらず、数日から一週間経っても痛みが良くならない場合は、まずは整形外科を訪ねましょう。さらに脊椎や脊髄を専門とする医師がいる病院ならなお良いでしょう。
整形外科で問診や画像検査を受け、おおまかな原因を特定することが大事です。症状によっては精神科や神経内科、脳神経外科、泌尿器科、循環器科などで治療を行うことになる可能性もあります。

医学的な診察を受けた上で、原因が筋肉疲労であったり、ストレスであったりした場合は、代替療法や民間療法を行ってみるのも良いと思います。

◆良い施術者かどうか見極める

病院の医師になるには医師免許が必要で、その習得のためには、大学における6年間の専門教育と、国家試験の合格という高いハードルがあります。そのため、ほとんどの医師には一定レベルの専門知識や技術があります。

それに対し、民間療法で国家資格が必要となるのは、整骨・接骨の「柔道整復師」と、鍼灸の「鍼灸師」のみです。そのほかは民間資格であったり、特に資格や知識・経験がなくとも開業および治療ができるものがほとんどです。
言ってしまえば全くの素人でも熟練者のふりをして施術できてしまいます。
実際、事前に1ヶ月程度の机上の学習しか行わず、浅い知識のみで施術を繰り返し、患者を実験台にして経験を積んだり、国家資格が必要なのに資格を持たない施術者が治療を行っているような悪質なケースも少なくありません。

脊椎の異常

<大きなトラブルや障害を引き起こすことも>

人体の構造(解剖学)を熟知していない未熟な者が、背骨や骨盤などの骨格を矯正したり、関節のズレを調整するような行為を行うことは大きな危険をともない、病状をかえって悪化させることになりかねません。

全ての民間施術者が危険性の高い施術を行っているわけではありませんが、不要なトラブルや取り返しの付かない事態を避けるためにも、民間療法を受ける際にはまず医師とよく相談し、その上で施術者が解剖学的知識を備え、十分な経験を積んでいるかどうかを確認してから治療を受けましょう。

「権威のある資格を持っているか」、「長期にわたって営業しているか」、「これまでの経歴・職歴・実績」、「口コミ・評判」などを参考にしましょう。医師に良い施術者を紹介してもらえるのが一番です。

◆漫然と同じ治療を続けない

一週間に2、3回程度治療を受け、半月くらい続けても背中の痛みの改善が全く見られない場合は、他の施術者や治療法を試したり、専門の医師に診てもらうなど、治療方法を変えてみることが望ましいです。今受けているやり方が自分の症状には合っていないかもしれませんし、施術者が未熟なケースもあります。

少しずつでも症状が改善してきているなら、今度は逆に治療法を頻繁に変えるのはよくありません。背中の痛みの多くは自然に治りますが、完治までに数週間〜数ヶ月かかることがあります。慢性化している痛みならなおさら良くなるまでには時間がかかります。治療の成果が出ているのなら結果を急いで治療法を変えるより、最低でも3ヶ月は同じ施設で同じ治療法を試したほうが、結果的には早く治る可能性が高いと思います。

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