肝臓がんで痛むケース

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肝臓がんとは(症状・原因・治療)

背中の痛みを引き起こす可能性のある病気の一つに「肝臓がん(かんぞうがん)」があります。
ここでは背中の痛みとの関係を交えながら解説します。

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1.肝臓がんが疑われる症状

背中の痛みのほかに、以下のような特徴や症状が見られる場合、肝臓がんが発症している可能性があります。

身体の右側の背中痛・腹痛



  • 背中の右側が痛む
  • お腹の右上部分の痛みやしこり
  • お腹が張ってカエルのようにふくらむ(腹水)
  • だるい、疲れやすい、食欲がない、体重減少
  • 眼、皮膚、体液が黄色っぽく変色する(黄疸)

病気の初期は目立った症状が出ないことが多いです。

肝臓がんの原因となる慢性肝炎肝硬変を患っている場合は、それらの症状である「体がだるい、疲れやすい、食欲がない」といった症状が見られます。

病気が進行すると、肝臓の腫れ、右肋骨の下あたりの圧痛やしこり、背中や腰の痛み、腹水、黄疸などの症状もみられるようになります。他の臓器から転移したがんであれば、転移元のがんの症状も加わります。

こうした症状は、肝炎や肝硬変の症状とほぼ同じであり、肝臓がん特有の症状といえるものは殆どありません。

2.肝臓がんとは 〜 原因と特徴

肝臓がん(肝がん)とは、その名のとおり肝臓にできる悪性腫瘍(癌(がん))です。

日本人に非常に多いがんで、全てのがんの約一割を占めます。年間の肝臓がんによる死者は三万人を超えており、男女比は2対1で男性に多く見られます。

がんができる原因には大きく2つあります。
一つが、肝臓の細胞からがんができる「原発性肝がん」で、もう一つが他の臓器にできたがんが転移する「転移性肝がん」です。

◆原発性肝がん

肝炎や肝硬変が悪化した肝臓がん

原発性肝がんは、「肝炎」→「肝硬変」→「肝臓がん」という順序で肝臓疾患が悪化した結果生じるケースが最も多く見られます。

肝臓に炎症(肝炎)が発生し、慢性的な肝炎になって徐々に肝細胞が壊れてゆき、肝機能が低下していきます(肝硬変)。
肝細胞の破壊と再生を繰り返しているうちに、遺伝子変異が起こり、がん細胞が生じるものと考えられます。

肝臓がんの患者の70%は肝硬変を、25%は慢性肝炎を患っていたというデータもあります。
肝硬変になる前の状態ではガンの発症率は低いですが、肝硬変後は年間7〜8%が肝臓がんを発症するともいわれます。


炎症の発生要因

日本では、ウイルス性の肝炎によって慢性的な肝炎になるケースが大半です。

原因として最も多いのがC型肝炎(約70%)で、次にB型肝炎(約20%)、残りがアルコール性肝障害(約10%)です。
C型やB型の慢性肝炎、肝硬変を持つ人は、肝臓がんの高危険群(ハイリスクグループ)と呼ばれます。ただし、肝炎が慢性化するのに10数年、肝硬変に進行するのに20〜30年かかります。そのため肝硬変や肝臓がんは高齢者(50〜60代の働き盛りの人)に多く発見されます。


  • C型肝炎
    C型肝炎ウイルス (HCV) に感染することで発症する肝炎。血液を介して感染する。
    針刺し事故、刺青、覚せい剤の注射などによる感染例が多い。性行為による感染や母子感染は少ない。
    30%は自然に治り、70%はウイルスが体内に残る「持続感染」の状態になる。
    持続感染から慢性肝炎になりやすく、慢性肝炎の状態が5〜10年以上続くと、肝硬変や肝臓がんが発症する確率が高まる。
  • B型肝炎
    B型肝炎ウイルス (HBV) に感染することで発症する肝炎。血液を介して感染する。
    性行為、針刺し事故、刺青、覚せい剤の注射などによる感染のほか母子感染も見られる。
    95%は自然に治り、20〜30%が急性肝炎を発症し、5%は慢性肝炎に進行するといわれる。
  • アルコール性肝障害
    肝臓にはアルコールを代謝・分解する働きがある。しかし長年多量の飲酒を続けた結果、肝臓に多大な負担をかけ、肝臓の働きが衰えると肝硬変を発症する。

近年は脂肪肝から肝硬変になるケースも増えています。
甘いものや油っぽいもの、お米やパンなどの炭水化物をたくさん食べる人は、肝臓に中性脂肪がたくさんたまる「脂肪肝」が起こりやすくなります

その他の要因

自己免疫疾患、代謝異常による疾患、寄生虫病、薬剤性肝障害、うっ血肝、経口避妊薬(低用量ピル)、カビ毒のアフラトキシンなど

◆転移性肝がん

肝臓は他の臓器のガンからの転移も多めです。それと同時に肝臓がんも他の臓器に非常に転移しやすく、特に肝臓の中で転移しやすい傾向があります。

肝臓がんは完全に治ったと思っても再発しやすいと言われます。これは転移によって同時に複数箇所にがんができたり、時期を変えて何箇所かに発生したりすることがあるためです(多中心性発がん)。

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3.診断・治療・予防

◆診断

医師の診断・診察

肝臓がんの原因となる慢性肝炎や肝硬変の有無を調べる場合は、血液中の成分から肝臓の働きや肝臓病の可能性を診断する「肝機能検査」を行います。ALT(GPT)、AST(GOT)、γ-GTPなどの値を見ます。

肝臓がんの検査法としては、腹部超音波検査(エコー検査)、CTスキャン、MRI検査などの画像診断を行います。
更にお腹から針をとおしてガンの組織を採取して調べる「針生検」も行われます。これらの検査で、がんの数、大きさ、悪性度などが分かります。

【関連項目】

◆治療

がんの個数、がんの大きさ、肝硬変のある人は肝機能の程度などを考慮し、症状や進行具合に応じた治療法が採られます。

主な治療法

  1. 手術療法
    お腹を開いてがんを切除する手術を行います(肝切除療法)。がんの数が1〜3個で、他の臓器への転移がないなど、軽度〜中程度のがんの場合に適応されます。がんの大きさはかなり大きくても可能です。軽度の肝臓がんに対しては最も確実な治療法で、入院期間は数週間から1ヶ月程度です。

  2. 肝動脈塞栓療法(TAE)
    がんに酸素と栄養を送っている動脈に細い管(カテーテル)を通し、動脈に栓をする物質を注入して動脈をふさぎ、栄養補給路を経つ方法です。がん以外の肝臓組織は主に門脈から栄養補給を受けているため、がんだけを死滅させることができます。
    がんの数や大きさに関係なく、肝機能がある程度低下していても行える治療法であり、手術やラジオ波焼灼療法と併用されることもあります。入院期間は一週間程度です。

  3. ラジオ波焼灼療法(RFA)
    細い針を肝臓がんに刺し、ラジオの中波と同じ波長の電波をあててがん細胞を焼いて死滅させる治療法です。直径3cm程度の範囲に80℃程度の熱さで行います。肝機能が相当悪くても可能であるため、がんの大きさが3cm未満、個数が3個以下の場合は優先して行われます。入院期間は一週間程度です。

  4. 経皮的エタノール局所注入法(PEIT)
    純度の高いアルコールを注入してがん細胞と周囲の細胞を死滅させます。体への負担の少ない治療法で、がんが小さく数も少ない場合に有効です。

ほかには血管に抗がん剤を注入する「肝動脈内抗がん剤注入法(TAI)」、放射線療法、化学療法、免疫療法、肝臓移植などの治療法もあります。

他臓器のがんが転移した「転移性肝がん」の場合、元の臓器のがんも同時にしっかりと治療し、再び転移しないようにすることが重要です。

◆予防

健康診断・人間ドック

肝臓がんは再発しやすく他の臓器への転移もしやすい厄介ながんです。しかし、多くの新しい治療法と予防法が開発され大きな効果を挙げられるようになりました。現在では重症化しない限り決して悲観的な病気ではありません。

ただ、肝障害はほとんど症状がない場合もあり、健康診断で肝臓の異常が見つかった時には既に肝臓がんになっているケースもよく見受けられます。
予防のためには集団検診や人間ドックは定期的に受診して、肝障害の発生を見落とさないようにすることが大切です。特に肝硬変まで進んでいる人は年に2、3回は検査を受けて早期発見に努めましょう。

4.その他

【受診科】

  • 消化器内科/消化器外科/消化器科/内科

【背中の痛みを生じる肝臓の病気・障害】

  • 肝炎

【肝臓がんの原因となる病気・障害】

  • 肝炎、肝硬変
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